Varicose veins of
the lower extremities

下肢静脈瘤について

金子医院

About varicose veins of the lower extremities

下肢静脈瘤とは

下肢(脚)の静脈が太くなり、コブのようにふくらんで表面に浮き上がって見える状態のことを言います。下肢の静脈は血液を心臓まで戻す役目があり、重力で血液が戻ってこないよう逆流防止の弁がいくつもあります。この逆流防止弁が機能しなくなることで血液が脚に停滞し、症状が現れます。
男性よりも女性に多く、加齢とともに発生頻度は増加します。また妊娠や出産経験のある方、立ち仕事の多い方は発症しやすい傾向にあります。遺伝性もあるため、ご両親に静脈瘤がある場合は子どもが発症する確率も高くなります。
下肢静脈瘤は命に関わる病気ではないため、見過ごされることがありますが、放置しても自然に治るものではありません。また進行するにつれ重症化し、皮膚疾患などを起こして治りにくくなったり合併症を引き起こすこともあります。

下肢静脈瘤セルフチェック
        
  • 足が痛い、だるい、重い、疲れやすい
  • 足のむくみやだるさが気になる
  • ふくらはぎがムズムズ、かゆい
  • 足の血管が浮き出てみえる
  • 足のむくみや冷えが続く
  • 足がつる(こむら返り)
  • こむら返りが痛くて、夜中起きることがある
  • 足の血管がボコボコしている
  • 足の痒みがおさまらない
  • 足にコブがある
  • 足に色素沈着が増えてきた
  • 治りにくい皮膚のただれがある
  • 足の皮膚に潰瘍がある

※1つでも、お心当たりがある人は下肢静脈瘤かもしれませんので、一度専門医にご相談ください。

Symptomatology & type

下肢静脈瘤の症状、タイプ

○ 下肢静脈瘤の症状

足がだるい
疲れやすい

逆流防止弁が機能しなくなることで心臓に戻るはずの血液が足に停滞し、血液中の老廃物や疲労物質も蓄積されます。特に午後になると足が疲れだるさを感じる方が多いです。この症状に慣れてしまうと、足のだるさが当たり前になってしまい下肢静脈瘤の症状であると自覚できていない場合もあります。

よく足がつる
(こむら返り)

下肢静脈瘤が原因で起きるこむら返りは、寝ている時に起きることが多いです。足の筋肉に痙攣が起きて固くなり、強い痛みを感じます。

足が
むくみやすい

足に血液が停滞することで、余分な水分が静脈周りにしみ出てむくみが生じます。下肢静脈瘤によるむくみは、くるぶし周辺や足首の後ろ側など膝下に現れるのも特徴です。また足のむくみは心臓病や腎臓病などその他の病気が要因となり起きる場合もあります。ふくらはぎ全体がパンパン、足の甲までむくんでいるといった場合は下肢静脈瘤以外の病気の発見にも繋がります。

足の皮膚が
黒ずんでいる

静脈瘤を放置すると、皮膚に色素沈着が起きます。皮膚の血液循環が悪くなることで炎症を起こし、湿疹のように赤みがでます。この状態が進行すると、皮膚が黒ずんで硬くなったり厚くなることもあります。

足が
すぐ痒くなる

足に溜まった老廃物が皮膚を刺激することで、かゆみを感じます。皮膚炎を起こすこともあり、皮膚科に通院している方も多く下肢静脈瘤の症状と気づきにくいです。

○下肢静脈瘤のタイプ

伏在型静脈瘤

伏在静脈の弁不全によって起こる静脈瘤です。脚のつけ根の静脈弁が壊れて血液が足に滞ることで発症します。足がだるい、疲れるといった症状があり、血管がボコボコと浮き上がります。

手術必要

側枝型静脈瘤

伏在型静脈瘤から枝分かれした短い静脈が拡張した静脈瘤です。範囲が狭く細い血管で起こるため症状が出づらく見た目ではわかりにくい場合もあります。

軽 症

網目状静脈瘤

皮膚直下にある細い静脈が拡張してできた静脈瘤です。
青く細い血管が見えるのが特徴で、網の目にみえるため網目状静脈瘤と言われています。血管がぼこぼこと浮き上がることはありません。

軽 症

クモの巣状静脈瘤

直径1mm以下の細い静脈が拡張し、血管がクモの巣のように広がって見える状態です。網目状静脈瘤と同様に血管がボコボコと浮き上がることはありません。

軽 症

Severe cases

下肢静脈瘤重症例

静脈瘤が原因で色素沈着や皮膚炎、潰瘍が生じることがあります。

うっ滞性皮膚炎

脚の静脈に血液が長時間にわたりうっ滞することによって、皮膚の栄養状態が悪くなり湿疹がでます。症状が進行するとかゆみが出たり色素沈着や皮膚の表面が硬くなることがあります。

うっ滞性潰瘍

うっ滞性皮膚炎を放置すると皮膚が弱くなり、潰瘍ができることがあります。潰瘍からバイ菌が入り脚が赤く腫れ上がったり、場合によっては入院が必要になります。

Treatment of severe cases

重症例の治療法

うっ滞性皮膚炎や皮膚潰瘍になると、レーザー治療、高周波治療、ストリッピング手術などで治療を行います。弾性包帯や弾性ストッキングを用いた圧迫療法も重要です。潰瘍が治るまでに数カ月の期間が必要なこともあります。潰瘍が治癒した後も再発を予防するために日常生活の改善など、長期的なケアも大切です。
最近は静脈瘤があまり目立たず、皮膚病から発症する静脈瘤の方も多く見かけます。皮膚科で治療をうけてもなかなか治らない時は、静脈瘤が原因の場合もあります。

うっ滞性皮膚炎
うっ滞性潰瘍

Female outpatient

下肢静脈瘤女性専用外来

下肢静脈瘤は男性より女性に多いと言われており、特に出産の経験のある方に多くみられる傾向があります。また立ち仕事の人にも多く見られ、年齢とも関係して加齢とともに頻度が増加します。
当院では不調やお悩みを安心してご相談いただけるよう、心臓血管外科専門医である女性医師が診察にあたる「静脈瘤女性専用外来」を設けております。女性専用外来では女性の患者様が安心してお越しいただけるよう、医師をはじめ治療にあたるスタッフは全員女性となっております。お気軽にご相談ください。

※女性専用外来は毎月第1木曜日の18:00〜20:00に行っています。

医師紹介

近藤 ゆか
1997年 藤田保健衛生大学 医学部医学科卒業
2003年 藤田保健衛生大学大学院 医学研究科博士課程修了(病態循環器学専攻)
1997年4月-1999年3月 藤田保健衛生大学病院 外科系研修医(消化器外科)
1999年4月-2000年3月 藤田保健衛生大学 胸部外科医員
2000年4月-2001年3月 豊橋市民病院 心臓血管呼吸器外科医員(専修医)
2001年4月-2003年3月 藤田保健衛生大学 心臓血管呼吸器外科医員
2003年4月-2008年7月 藤田保健衛生大学 心臓血管外科助手(助教)
2008年7月-2010年9月 Associate Research Scientist, Department of Surgery, Section of Vascular Surgery, Yale University School of Medicine, CT, US
2010年12月-2011年7月 三重大学医学部付属病院 心臓血管外科医員
2011年8月-2014年4月 三重大学医学部付属病院 心臓血管外科助教
2014年5月1日〜2018年9月 医療法人偕行会名古屋共立病院 血管外科部長
2018年10月〜現在 藤田医科大学ばんたね病院 外科 講師
資  格

日本外科学会専門医・指導医
3学会構成心臓血管外科専門医認定機構 心臓血管外科専門医・修練指導者
日本血管外科学会認定血管内治療医
下肢静脈瘤血管内焼灼術実施医・指導医
臨床研修指導医
弾性ストッキング・圧迫療法コンダクター

役 職

日本血管外科学会評議員・女性医師支援委員・将来構想委員・評議員選定委員
日本静脈学会評議員
日本脈管学会評議員

Progress check

下肢静脈瘤の進行度チェック

下肢静脈瘤は進行するにつれ症状が変化し、進行度によって治療法も異なります。軽症・中等症・重症に分類され、患者様ご自身で見て分かる状態から隠れている静脈瘤もあります。下肢静脈瘤は自然治癒せず、徐々に進行していきます。ご自身の症状から進行度をチェックしてみましょう。

初期症状
足のむくみ・だるさ・重さ

下肢静脈瘤の症状で代表的なものですが、他の病気が原因の場合もあります。

軽 症
細い血管が浮き出て見える

皮膚に血管が薄く浮き出てみえる状態です。
まだ瘤にはなっていませんが、網目やクモの巣状に広がっうっ滞性潰瘍うっ滞性皮膚炎て見える場合もあります。

中等症
血管が浮き出てコブのようになる、ボコボコしている

見た目の問題に加えて、痛みやしびれなどの症状も現れます。
見てわかる静脈瘤の他にも、他の場所に隠れている場合もあります。

重 症
足に色素沈着や皮膚の炎症がある

静脈瘤を長期放置した場合、色素沈着や皮膚の炎症を発症します。
さらに放置すると湿疹や皮膚の硬化、最終的には潰瘍化し治療にかなりの時間がかかってしまいます。